アメリカ本土でのUSCPA受験録

アメリカ本土でUSCPAを受験した過程を綴っています

元銀行員がアメリカ本土でUSCPA試験を受験した過程を綴っています

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【後日譚②】日本で再就職しました

ご無沙汰しております。

2017年~2019年にかけて更新していたブログですが、いまでもアクセスしていただいておりとても嬉しく思っています。

私が受験していた頃と比べると、手続き面でもグアムの出願プロセスがオンライン化されたり、Testing Windowが廃止になったり、2024年1月からはUSCPA試験そのものが大幅にリニューアルされる予定だったりして、いろいろと変わっている部分もありますが、いまでも参考になる部分があれば幸いです。

 

USCPAはキャリアチェンジ・キャリアアップの役に立つのか?

自分がUSCPAを受ける前に一番気にしていたのは、「この資格を取れば、本当にキャリアチェンジやキャリアアップにつながるだろうか?」ということでした。

特に私の場合、夫のアメリカ駐在に帯同するために退職してしまったので、「アメリカ滞在中に何かやっておかないと社会復帰できなくなってしまう!」という不安が強かったです。

(いろいろな出来事が重なって銀行を退職しましたが、何らかの形でずっと働きたいと思っていました)

 

USCPAはきっと将来の求職活動の役に立つだろう、と信じて勉強を始めたわけですが、2021年に約4年のアメリカ生活を終えて日本に帰ってきて、実際に求職活動をやってみた感想は、

 

USCPAが求職活動に役に立った部分もあるし、役に立たなかった部分もある。

年齢、これまでの職歴、転職で希望する条件によるので役に立つかどうかは人それぞれ。

私のケースについて言えば、離職期間(ブランク)の免罪符になるかと期待していたけどそうはならなかった。

だけど英語力と専門知識の証明書としてはある程度機能してくれた。

 

……という身も蓋もないものでした。

ただ、結果として、現在は無事に社会復帰して、東証グロース上場企業で主にIR業務を担当しています。

 

ご参考までに、私の求職活動および現在の仕事においてUSCPAがどう役に立っているのかをご紹介したいと思います。

 

求職活動の条件

実は、USCPAの受験を終えてから子供が生まれました

というわけで、

・約8年の銀行勤務経験があるけど

・4年強のブランクがあり

・ブランクの間にUSCPAに全科目合格したけど

・会計業務や監査業務は未経験で(ライセンスも未取得)

・未就学児を抱えている

という状況で求職活動を始めました。

首都圏でしたが保活は最優先でクリア

未就学児を抱えながらの求職活動で、最大のネックになるのは保活、もとい保育園探しです。

本帰国後に住まいを決めるにあたっては、①夫の通勤時間、②保育園への入りやすさ、③家賃相場、の3点を重視しました。

当然、都心への通勤に便利なエリアは保活激戦区ですので、求職中から預けるなら、最初から認可保育園はあきらめて認可外保育園を狙うか、郊外で比較的保育園に余裕のある地域に住むしかありません。

私たちは、少し郊外で、都心への通勤にはやや時間がかかるけれども、比較的保育園に空きがあるエリアに住むことにしました。

小さな子供がいるので、保育園への送迎や急な体調不良への対応を考えると、通勤時間は短いに越したことはありませんが、子どもを保育園に預けないと働けませんから、やむをえませんでした。

ただ、折しも新型コロナウイルスの影響で多くの企業が在宅勤務を取り入れていた時期で、人材エージェントとの面談や企業の採用面接もほぼすべてオンラインになっており、リモートワークを希望しても受け入れてもらえる素地があったのは、私にとってはとてもラッキーでした。

そうは言ってもフルリモートワークOKのところは多くはないので、興味のある企業でも勤務地によってあきらめざるをえないケースもよくありましたが。。。

 

 

実際の求職活動

①コンタクトを取った人材エージェントの数:20社

求職活動を始めて最初の1カ月は、大手から小規模なところまで、多くのエージェントと面談をしました。

エージェントにも「コンサル業界に強い」「金融機関出身者に強い」「外資系に強い」など特色あるので、自分の希望や強みに合わせてコンタクトを取るのがおすすめです。

その中で良いエージェントと巡り合えるかどうかが求職活動の結果を左右します。

個人的には、大手は右から左に案件を流してくるだけでマッチング精度が低かった印象です。応募しても書類落ちになる確率が高いし、面接に進んでも求人票に記載された内容(「幅広く業務経験ができます」などの文言)が実際には違うというケースがよくあったので、途中から全く利用しなくなってしまいました。

中~小規模で、丁寧にマッチングしてくれるエージェントの方が、自分でいちいち調べる手間が省けてよかったです。

②応募した企業の数:24社

私の求職活動の軸は、①柔軟な働き方が認められていること(子育てと両立しやすいこと)、②財務会計に関する知見を活かせること、の2点でした。

この軸に基づき、私の希望に合っていそうな企業に応募しました。

③内定をもらった数:5社

応募した24社のうち、途中で辞退したところもありましたが、最終的に5社から内定をいただくことができました。

内訳は以下のとおりです。

・日系大手グローバル企業1社

・日系大手企業の新設子会社1社

・日系中堅企業1社

・上場前後の新興企業2社

「日系大手はブランクを嫌う」とエージェントから聞いていましたが、大手企業の中にもきちんと過去の経験や能力を評価してくれるところはありました。

求職活動においてUSCPAが役に立ったのか?

正直言えば、エージェント経由でのフィードバックを聞く限り、内定をいただいた5社すべてにおいて、一番評価されたのは過去の職務経験やその中で培ってきたコミュニケーション能力だったようなので、「USCPAが無くても内定をもらうことはできたかも?」とは思います。

ただ、個人的にはUSCPAの勉強をしておいてよかった、と思いました。

その理由としては、以下のとおりです。

・語学が堪能な人物であると評価してもらえる

・向学心があると評価してもらえる

・ブランクがあっても、自己紹介の時に自信を持って「離職中はスキルアップのためにUSCPAの勉強をして全科目合格しました」と言える

・監査法人を希望するなら書類は通りやすい

特に語学力については、まとめ記事にも書いた通り、渡米前の私のTOEICのスコアは820点でした。

uscpa-iori3.hatenablog.com

このスコアをそのまま履歴書に書いて求職活動をしたのですが、「直近テストを受けていないがこの時よりも上がっているだろう」と見られましたし、英語圏での留学経験や勤務経験がないにも関わらず、「すべて英語で行われるUSCPA試験に受かっているんだから英語能力は高い」と評価していただくことが多かったです。

実際、働き始めてから受けたTOEIC IPテスト(L&R)では、930点を取ることができました。

私の場合、USCPAの勉強だけでなく、アメリカで生活していたことも多少は加味されたかと思うのですが、USCPAに合格していたことによって、特に監査法人や外資系企業、海外現地法人がある日本企業、海外金融機関や海外投資家とやりとりする業務など、英語を使う業務がある企業や職種にはプラスに働いたと思います。

逆に、USGAAPの知識や英語力をほとんど必要とせず、それよりも実務経験を重視するような経理系のポジションは書類で落ちてしまうことが多かったです。

 

現在の仕事であるIR業務とUSCPA

IR業務でUSCPAが役に立っているか

冒頭に書いた通り、現在は東証グロース上場企業で、主にIR業務を担当しています。

IR業務は全くの未経験でしたが、以下の点ではUSCPAの知識が役に立っていると感じています。

・財務会計の基礎知識や分析能力

・英文会計に関する知識(英語開示資料の作成や海外機関投資家とのミーティングなどで必要になる)

私自身は、銀行勤務時代に、企業の財務数値やKPIのデータ、マーケット情報などを集めて分析し、プレゼンテーション資料を作成するような業務をやっていましたし、証券アナリストの資格も持っているので、1点目はUSCPAの勉強だけのおかげというわけではないのですが、2点目はUSCPAの勉強のおかげで英文会計の専門用語なども理解できているかなと思います。

ただ、IR業務は企業ごとに力の入れ具合や業務内容がだいぶ異なると思います。

英語の開示資料をそもそも作成していなかったり、作成していてもほぼ翻訳会社に外注していたり、海外機関投資家とのミーティングがほとんどなかったり、という上場会社も多いので、一概にIR業務にUSCPAが役に立つとは言えません。

英語のできるIR人材は少ない→キャリアにエッジが立つ

そもそも、私自身、IRポジションを希望していたわけではないですし、むしろ最初はエージェントからIRポジションを紹介されたときは、これまでの私の経験とは縁遠く業務内容のイメージがつかなかったのでお断りしていました。

ただ、あるエージェントから「日本には英語のできるIR人材がほとんどいないので、キャリアにエッジを立てられると思いますよ」と言われました。

実際にIR業務を始めて、他社のIR担当の方と交流してみても、その通りだなと感じます。

証券会社のカンファレンスでは、日本企業の多くは通訳をつけている状況です。

通訳を介すると、1時間のミーティングであっても実際にはその半分しか話せないし、通訳の経験・知識によっては細かなニュアンスを伝えるのが難しく、また、スピーカーの熱量や思いはどうしても伝わりづらくなってしまいます。

「英語で会社の状況や今後の見通しを正確に海外機関投資家に伝えることができる」ようになることができれば、なかなか稀有な人材になれると思いますし、上場企業のCFOにはそういった能力が求められています。

CFOにまではならずとも、英語を使ってIR業務を行った経験があればその他のキャリアにも活かせそうだなとは感じています。

私自身の今後のキャリアの方向性

IR業務自体は奥が深く、特に以下のような点に醍醐味を感じています。

・グロース上場企業なので比較的会社の規模が小さく、CEO、CFOなど経営陣と直接話をしながら、ある程度裁量を持ってIR戦略やストーリーを考えることができる

・統合報告書やサステナビリティ情報の開示など、型がなく正解のない世界なので、自由に想像力を発揮できる(明確な会計基準や指針がありそれに正確に従わなければならない財務会計とは真逆の世界)

・プライムへの移行やグローバルオファリングなど、今後の会社の成長に伴って様々な経験を積むことができる

・開示資料に基づいて機関投資家や個人投資家とIRミーティングをすることで、自分たちが出した資料や数字に対するフィードバックを得ることができる

今はほぼIR専任の状況なのですが、今後はもう少し幅広い経営管理業務、特に予実管理やKPIの分析など、数字に近い分野にも携わりたいなと思っています。

また、英語に関しても、もっとレベルアップして英語のIRミーティングのスピーカーもこなせるようになるべく、日々勉強しているところです。

 

さいごに

もし私が友人にUSCPAの勉強を始めるか相談されたら

もし私が友人からUSCPAの勉強を始めるか相談されたと仮定して、おすすめできる人を列挙してみます。

・日本語での財務・会計・監査に関する知識や実務経験がある

・英語での専門性を身につけたい

・将来的に監査法人や、英語や英文会計の知識が必要となる企業・職種への転職、あるいは海外での就職を考えている

・仕事や子育ての合間を縫いつつ、週に20~25時間程度の勉強時間を継続的に確保できる

こういった方はUSCPAの勉強をしてみても良いのではないかと思います。

逆にそうでない人は、予備知識がない状況での勉強が大変だったり、モチベ―ジョンを維持するのが難しかったりするので、あまり手放しでおすすめはできないなという印象です。

ライセンスは未取得のまま

なお、私自身はライセンスは未取得のままです。現在の業務でUSCPAの資格が必要なわけではないですし、コロナ以降、対面ミーティングの件数は減っていて名刺に肩書きを書いたところで名刺交換の機会も少ないのでライセンス取得に意義を見出せていません。

もし対面ミーティングが増えたり、それこそグローバルオファリングのために海外出張などにも行く機会がありそうだったら、取得を考えたいなと思っています。

こうやって悠長に構えていられるのも、グアム出願でアメリカ現地受験だったからですね。

 

 

USCPA自体はグローバルに通用する汎用性のある資格です。

受験するための事務手続きや勉強は大変でしたが、私自身は受験してよかったと思っています。

私の経験が誰かのお役に立てば幸いです。